夏ようかんの思い出
お酒を飲むのも好きだけど、甘いものも大好きな甘辛両刀使い(^^;)は母の遺伝かしら! お酒が好きなくせに、お饅頭やケーキも大好きで、糖尿病と闘う父の目を盗んで食べている!
ここだけの話ですが、母の酔った姿を見たことがないんです.本人は酔っ払ってみたいなんて言うけれど、好きなお酒を飲んでいい気分でお喋りなんかしているから、けっこう楽しんでいるはず.お酒はなんでも飲みます.実家に帰ると飲み相手が来たと喜んで、一升瓶を抱えて帰ってきたものです.
今は、近所に住んでいるのに、なかなか飲みに行く機会がないと嘆いていますが・・・
そうそう、この夏ようかん、以前はよく作ったんです.羊羹を自分で作れるとは思っていなかったのですが、いつか暮らしの手帖にレシピが載っていました.小豆を煮てから水洗いする、なんて書いてあるのでびっくりしましたが、やってみるとなるほどこれでアクがきれいに取れるのだなと感心しました.
小豆は体にいいそうですし、寒天は食物繊維を含む食べ物の王様、甘さも控えめにすればヘルシーなデザートです.
このよ夏うかんには、粒餡を使います.これがどうしても自分で作りたい理由なんです.
お店に売っているのは漉し餡がほとんどですものね.わたしは関西人のせいか、粒餡が大好きです.お饅頭でも、最中(もなか)でも、お善哉(ぜんざい)でも・・・
お善哉というのは、関西風の言い方らしいですが、こっちではなんというのかな? 田舎汁粉? 御前汁粉?
関西では、なんでも粒餡.粒餡でないとあんこでないというぐらいの気分です.お善哉というのは、粒餡の入っているのが正統.関東に来て「お善哉」といって注文すると、お善哉が来ない!
「汁粉」というのは、読んで字のごとく、汁の粉です.ちょうど、懐中汁粉みたいな感じです.最中(もなか)の皮の中に漉し餡の粉末が入っていて、お椀に入れて熱湯を注ぐと、最中の皮がほとびてゆるい水団(すいとん)のようになり、即席汁粉(!)ができる、というものでした.
また、関西には「亀山」というのがあって、これはきび餅などの上に粒餡をたっぷりのせたものです.まるで、ちょっとゆるいお饅頭のあんこをお椀に入れて食べるような・・・
でも最近は息子たちが甘いものを食べなくなってしまったので、ここ数年は作っていなかったんです.たくさんできても家で食べるのはほんの数個、残りはどなたかにあげてしまうしかないので・・・
それが、ふとしたことで集まりに持っていくことになり、久しぶりに挑戦しました.お友達に食べてもらうのに失敗しては大変と、ちょっと緊張しながら作りました.
小豆を炊くほのかな香り、シロップと合わせて餡になったら、じっと寝かせて・・・寒天のつるりとした感触、ぶつぶつ顔を出す粒餡・・・耳の下あたりから、つばが涌いてきそうです.
大成功!
久しぶりに粒餡の入った水羊羹を食べられるなんて幸せです!
酒席に羊羹は合わないよ、と言われながら、おそるおそる出してみました.皆さん、やさしい方々でおいしいといってくださり、一安心.あまり甘くないので、よかったようです.
チョコレートを肴にウィスキーを飲むという人もいるし、甘いシロップの入ったカクテルや、ココア風味のもありますから、羊羹を肴にビールというのもいいかもしれません.
怖がっている人がいるようですが・・・(^^;)
実はこの集まりは、BBSで知り合ったお友達とのオフ会!
紫陽花倶楽部の話題が出て、特製弁当のページを見てもらったところ、食べたい、行ってみたい・・・ ぜひ、どうぞ、と、とんとん拍子に話しが進んで、信じられないオフ会が実現したんです.8月の暑い日、一人は金沢八景から、二人は春日部からはるばる鎌倉へ来てくださり、わが紫陽花倶楽部の例会にお客さまとして参加してくださいました.
ネットでしか知らなかった人たちが現実に会うなんて、とっても不思議な気がします.もちろん顔も知らないし、話したこともない.ネットで知り合ったのもほんの2ヶ月ぐらい前のことです.
お互い初対面の一人と二人が先に合流し、三人で北鎌倉に着ましたと電話をもらってお迎えに・・・ 駅で待っているものと思い込んで、こちらも三人で歩き出しました.途中の橋の上で観光客が立ち話をしている・・・そうだ、あの三人だ、と直感!
どうして顔も知らないのに分かったのか・・・そんなことより、会ったとたんに旧知の友人のような親しみが涌き、まるで幼友達のような気がするのはどうしてか・・・これは一生解けることのない謎です.
まるで昨日の話の続きのようなおしゃべりをして、お弁当に舌鼓を打ち、よく飲み、三時間があっという間に過ぎ去りました.まだまだお話したいことや、お互い聞きたいことなどたくさんあったのですが、家族が長の別れをするようにお別れを言ったのでした.
それぞれがお互いに抱いていたイメージは多少ずれていたけれど、それだって楽しい誤解.そこからまた新しい出会いが始まる.なんてすばらしい出会い!
・・・if ・・・if ・・・if ・・・if ・・・if ・・・if ・・・if ・・・if ・・・if ・・・if ・・・
もし、PCを持たなかったら
もし、インターネットを知らなければ
そして、もしBBSを持とうとしなかったら
もし素敵なページを教えてもらわなかったら
この出会いは存在しえなかったと思うと
なにか赤い糸で結ばれていたような気さえします.
・・・if ・・・if ・・・if ・・・if ・・・if ・・・if ・・・if ・・・if ・・・if ・・・if ・・・
そして喜んでもらえた羊羹.久しぶりに作って見て、昔感じていたより、ウンと簡単にできた羊羹.食べてもらう人が大勢いるからか、どんな顔をして食べるかな、とわくわくしながら作ったからか、本当に楽しんで作れました.
夢のような時間と、夢ではない素敵なお土産やプレゼントの思い出を残して、赤い糸はしっかりと撚られました.心づくしの夏ようかんも、その一助になったかしら・・・
このおいしさをぜひ多くの人に味わってもらいたい、特に遠いところから来てくださった大事なお友達に・・・、と願いながら、そして今度は母にも届けようと思いながら、レシピを書いてみました.
作り方は「暮らしの手帖」から、写真は自前です.
味は、わたしこと「かぼちゃ」好みの甘さ控えめにしています.
もちろん、熱いお茶や、お抹茶、冷たい麦茶にも、よく合います.
2000年8月25日
|